ACoA(Adult Children of Alcoholics)の共同創始者トニー・Aの著作『ランドリーリスト ACoAという経験』訳本のパイロット版の読書会のページです。
『ランドリーリスト』読書会は終了しました。参加された皆様ありがとうございました。
The Laundry List: The ACoA Expereince (English Edition)
『ランドリーリスト』の読み合わせとディスカッションを通じて、その内容の理解を深め、訳文改善のフィードバックを行い、訳本を完成させることを目指します。
今ここにはなにもありません
1991年2月25日にトニー・Aが行った講演 → 心の家路 wiki
アラノンとはアルコホーリク(≒アルコール依存症者)の家族のためのグループです。そして、アラティーンとは親がアルコホーリクである10代の子どもたちのために、アラノンが開いているミーティングです。アラティーンの参加者は成人すると、アラノンのミーティングに移っていきます。
しかし、1977年のニューヨークで、成人する前後のアラティーン参加者たちが、自分たちのためのミーティングを始めようとしていました。彼らはアルコホーリクの配偶者であるアラノンのメンバーたちと自分たちを同じと見なすことに困難を感じており、自分たちのための特別なミーティングを必要としていました。そこで彼らは、アダルトチルドレン・オブ・アルコホーリック(ACoA、アルコホーリクの親のもとで育って大人になった人たち)のためのミーティングを始めました。
そのメンバーの一人が、AAメンバーのトニー・A(Tony A., 1927-2004)の話を聞き、彼をACoAのミーティングのスピーカーに招きました。トニー自身もアルコホーリクの親のもとで育っており、子どもの頃に自分の身を守るために不適切で有害な行動パターンを身に付けたと考えていて、それについて調べていた人物でした。
それをきっかけとして、トニーはこのグループに加わりました。トニーと他のメンバーとの違いは、トニーがアルコホーリクであったことと他の人たちより30才ほど年上だったことです。共通していたのは、全員がアルコホーリクの親のもとで育って大人になったことでした。
トニーはこのグループのために「ランドリーリスト」と呼ばれる性格的特徴のリストや「解決」のオリジナル版を書き、さらにはACoAのための12ステップを作り上げました。そして、1990年にそれまでの12年間のACoAでの経験と問題やプログラムについての彼の解釈を綴った本書を出版しました(The Laundry List — The ACoA Experience, 1990, HCI)。すでに絶版になっていますが、Kindle版は1,020円で入手できます。
The Laundry List: The ACoA Expereince (English Edition)
トニーらが作ったACoAのグループはやがて全米に広がっていきましたが、それは大きく分けて三つの流れに分流していきました。
このうち、3番目の選択肢を選んだグループACoAが最も多かったようですが、1990年代を通じて2番目・3番目のグループは衰退していってしまうのでした。21世紀に入り、2番目のグループ(ACA、日本ではACoA)は機能不全の家庭で育った人たち(Adult Children of Dysfunctional Families、ACoD)を正式なメンバーとして受け入れ始めます。それによって拡大が始まり、世界的なグループに成長しました(略号はACA・ACoAどちらでも可とされている)。
しかし、対象を拡大したことによって問題の本質が不明瞭になったことや、グループ外部のセラピストの理論の影響を受けたことで、回復への道筋が分かりにくくなったことは否めません。
追記:ACAの12ステップはACAが1984年にAAの12ステップに忠実に作ったものですが、トニーはそれが「アダルトチルドレンの根本的なジレンマに対処できていない」と批判し、別に作り上げたのが1990年出版の『ランドリーリスト』に掲載されたACoAの12ステップです。
本書の内容の特徴は、その明確さにあります。本文中にも「有効な解決方法は、問題の正確な定義からしか生れてこない」とあるように、トニーはAC(アダルトチルドレン)とは何か、ACの抱える問題とは何かを明確に定義しています。そして、そこから明確な解決方法が導き出されます。
トニーが作ったACoAのための12ステップは、標準的な12ステップとは内容が随分異なります(ACAの12ステップはトニーのものと異なりむしろ標準に回帰しています)。標準とは異なった12ステップを採用することの是非はともかくとして、なぜそのような異なった12ステップを採用する必要があったかを理解することで、ACという問題への理解が深まるでしょう。
トニーは自分が作った12ステップの特異性については強調していません。彼はむしろACoAではミーティングの内容が他の12ステップグループとは異なっていると強調しています。それが回復に大きな役割を果たしているとしています。
(略)
from ACODAミーティングハンドブック p.4
- ミーティングに定期的に参加することによって、もっと意味のある生き方ができることがわかってきた。
- 私たちは自分の態度や行動の習慣の、古いバターンを変えるようになってきた。心の落ち着きを、さらには幸せを感じるようになった。
- アディクションは、精神、身体、霊性の三重の病気である。私たちの親は、この、死または狂気に至る病気の犠牲者だった。このことを知ることが、自分を自由にする第一歩だった。
- 私たちは自分に関心を向け、自分を満たすことを学んだ。
- 私たちは感情を意識し、受け入れ、表現すること、そして自己評価を高めることを学んだ。
- 私たちは回復のブログラムとして提示された12のステップ使った。ステップを踏むことを通じて、私たちは「アディクション」や「機能不全」を理解し、自分の生活がどうにもならなくなっていること、機能不全の影響に対して無力であることを受け入れるようになった。
- 私たちは「平安の祈り」を使った。「今日一日」「手を放してハイヤーバワーにまかせる」「気楽にやろう」などのスローガンを使った。
- 自分の短所や病んだ考え方を認められるようになるにつれて、態度を変え、反応を行動に変えていけるようになった。自分自身以外による解決があることが、つまり自分より大きな力があることわかってきた。私たちは経験を分かち合い、他の人たちと関わり、新しく来た人を歓迎し、グループのサービスをすることによって、自己肯定感が身についてきた。
- 私たちは愛しつつ愛着から離れることを学んだ。
- 私たちは自分を愛するようになった。そのことによって、他の人たちをもっと健康的な仕方で愛するようになった。
『ランドリーリスト』ではトニー・Aが書いた「解決」に言及しているが、その内容は現在のACoAが使っている「ACAの解決」とは明らかに違っている(第二章の「問題/解決」を参照)。しかし、トニーの書いたものを探しても見つからない。ACODAの使っている「解決」がトニーのものに近いのかもしれない、という説が出てきた。 * ACA 解決
トニー・Aの1991年2月25日の講演の翻訳も参照しながら:
(おしまい)